ごあいさつ

第19回肝細胞研究会 会長挨拶

 第19回肝細胞研究会は、平成24年6月29日(金)、30日(土)の2日間にわたり札幌医科大学臨床研究棟講堂において開催いたします。

 本研究会は、肝臓を構成する様々な要素に関係する研究について発表可能で、そのため発表分野は、発生学、生理学、病理学、薬理学、栄養学、組織工学など基礎的分野から臨床研究までを広くカバーしています。参加者も従来の学会・専門の枠を超え、肝臓について「知りたい、学びたい」と云う思いのある人達が一同に集い勉強する会で、主催者と参加者が一体となって会を作り上げていくような独自性の高い研究会になっています。
 1会場での口頭発表と隣接する場所でのポスター発表、短くはない発表時間と十分なディスカッション時間の確保を基本コンセプトにしているので、参加者は肝臓研究の最前線の研究発表に、もれなく触れることが可能です。これまでに研究会を主催された大会長は、最新のテーマでシンポジウムを企画し、参加者を引きつけると共に、若手の研究者の研究意欲を増し、かつ積極的に議論に加わることができる雰囲気を作ることで、活発な質疑応答が行われるように様々な工夫を凝らしてこられました。第19回研究会におきましては、「肝臓の機能発現における組織構築の重要性」をメインテーマに活発な議論が展開され、肝臓学の更なる発展を期待し、これまでの基本コンセプトを守りつつ、従来にも増して実りある研究会にしたいと思います。

 最近の肝臓学のトピックスを踏まえ、次のように企画いたしました。

特別講演

演者:小島 至 教授(群馬大学生体調節研究所病態制御部門細胞調節分野)
タイトル:肝重量の恒常性維持機構 

シンポジウム I 「肝臓の発生・生長・再生における肝組織形成」(一部指名と公募)

 出生後の肝臓の生長過程では、肝細胞と胆管上皮細胞、それぞれの分裂により細胞供給がなされているとされ、幹細胞は存在するものの、その機能は主に障害時に重要であるとの考え方が主流であった。しかしながら、最近のLineage tracingを用いた実験によって、胆管上皮細胞由来の(幹)細胞が肝細胞を供給している可能性が示唆され、肝臓においても生理的条件下において幹細胞が働いている可能性が示された。このような現状から、肝幹・前駆細胞研究に新たな視点が求められている。本シンポジウムでは、肝発生過程や成体正常肝臓における幹・前駆細胞の分化の機序と、組織形成過程や肝再生過程における肝幹細胞の寄与、および肝細胞−胆管上皮細胞転換について考える場としたい。

指名講演者: 鈴木 淳史 先生(九州大学生体防御医学研究所器官発生再生学分野)
川口 義弥 先生(京都大学 iPS細胞研究所臨床応用研究部門)

シンポジウム II 「肝細胞の機能発現を制御する環境因子」 (一部指名と公募)

 最近、iPS細胞やES細胞からのみならず、体細胞からも肝細胞への直接的な分化誘導が報告され、ex vivoにおいて肝細胞を大量に作出する道が開かれようとしている。一方で、肝小葉内は、部位により環境が大きく異なるため、肝細胞の機能はその局在部位の環境に強い影響を受けることが知られている。人工的に誘導された肝細胞を、再生医学や創薬研究への応用するためには、肝細胞の機能発現に必要な環境を整えて、真に肝細胞として必要な性質を付加することが必要である。本シンポジウムでは、in vivoにおいて肝細胞の機能が発現・維持されている機構について議論するとともに、in vitroやex vivoで如何に生体内の状態を模倣できる系を作ることができるかについて考える場としたい。人工肝臓を視野に入れた研究や、細胞間相互作用など肝細胞機能調節に関する研究も対象としたい。

指名講演者: 合田 亘人 先生(早稲田大学先進理工学部生命医科学分子生化学)
大橋 一夫 先生(東京女子医科大学先端医科学研究所)

 

 これまでに呈示されてきた様々な議論の多い肝臓学の課題に方向性を与えるような意欲的な発表を期待いたします。また、若手研究者のポスター発表演題の中から数題を選び優秀ポスター賞を授与したいと思います。若い先生や大学院生の積極的な演題応募を期待しています。

 6月の札幌は、花も咲き空気も澄んだ最も北海道らしい季節です。
多くの先生方のご参加を心よりお待ちいたします。

平成24年2月1日

札幌医科大学フロンティア医学研究所
組織再生学部門
三高 俊広